1. 春はなぜ不調が出やすいのか
春は「新しいことが始まる季節」。環境の変化や人間関係のスタートで、心も体も忙しくなります。
東洋医学では、春は「肝(かん)」の季節。肝は血の貯蔵や気(エネルギー)の巡り、自律神経のバランスを司ります。
冬の間に溜まった緊張や寒さによる縮こまりが一気に開放される時期ですが、その変化に体が追いつかないと不調が現れます。
特に春に多いのは以下の症状です。
・ イライラ、落ち着かない
・ 頭痛やめまい
・ 目の疲れ・充血
・ 肩こり、首の張り
・ 胃の不調
・ 生理周期の乱れ
2. 肝の不調とストレスの関係
肝は「疏泄(そせつ)」と呼ばれる、体内の気や血の流れをスムーズにする働きがあります。
この機能が滞ると、ストレスを感じやすくなり、感情のアップダウンが激しくなります。
現代でいうと、自律神経がうまく切り替わらない状態です。交感神経ばかりが優位になり、緊張モードが続くことで体も心も疲弊します。
また、肝は目と関わりが深く、パソコンやスマホ作業が多い春は、肝の負担がさらに増える傾向があります。
3. 鍼灸でできる春の肝ケア
鍼灸では、肝の巡りを整えて気持ちも体も軽くするアプローチを行います。
・太衝(たいしょう):足の甲、親指と人差し指の骨の間。肝の気を巡らせ、イライラや目の疲れを和らげる
・合谷(ごうこく):手の甲、親指と人差し指の間。全身の巡りを改善し、頭痛や肩こりにも有効
・百会(ひゃくえ):頭頂部の中央。自律神経のバランスを整える
・期門(きもん):胸の下の肋骨際。肝の働きを助け、胸のつかえ感を改善
また、鍼灸の後に軽くお腹や背中を温めることで、副交感神経が優位になりリラックスしやすくなります。
4. 日常でできる春の養生
鍼灸と並行して、生活習慣や食事でも肝のケアを意識しましょう。
・朝は軽くストレッチ:肝は伸びやかに動くことを好みます。肩回しや前屈で全身をほぐす
・緑の食材を取り入れる:菜の花、ほうれん草、春菊などは肝の働きをサポート
・香りを活用:柑橘やハーブの香りは気分をリフレッシュ
・目を休める時間を作る:1時間に1回は画面から目を離す
・深呼吸を習慣に:腹式呼吸で自律神経を整える
5. まとめ
春は心と体のリズムが変わるため、肝のバランスが乱れやすい時期です。
鍼灸は肝の巡りを整え、自律神経を安定させることで、イライラや頭痛、目の疲れなどの春特有の不調を和らげます。
日常生活にストレッチや食事・香りの工夫を取り入れれば、さらにのびやかで軽やかな春を過ごせます。
冬のこわばりを解き放ち、春のエネルギーを上手に取り入れて、気持ちも体も伸びやかに新しい季節を迎えましょう。