1. 秋は「乾燥」の季節
秋になると空気が急に乾き、朝晩の冷え込みも強まります。東洋医学では、この時期は「燥邪(そうじゃ)」という乾燥の影響を受けやすいと考えられています。燥邪が体に入り込むと、特に「肺」にダメージを与えやすく、咳・喉の痛み・肌の乾燥などの症状が現れやすくなります。
肺は呼吸をつかさどると同時に、皮膚を潤し、免疫機能を守る役割を担っています。そのため、秋に肺が弱ると「風邪をひきやすい」「肌荒れしやすい」といった不調につながるのです。
2. 秋に出やすい不調
肺が乾燥で弱まると、次のようなトラブルが目立ちます。
・空咳や喉のイガイガ
・鼻の乾燥、鼻血
・肌のかさつき、湿疹
・便秘
・風邪をひきやすい
「潤い不足」がキーワードになる季節です。乾燥による不調を予防するには、肺を潤す養生が大切です。
3. 鍼灸で肺を整える
鍼灸では、肺を潤し、呼吸と免疫のバランスを整える施術を行います。
・尺沢(しゃくたく):肘の内側。咳や喉の不調を和らげる
・太淵(たいえん):手首の親指側。呼吸機能を高め、免疫をサポート
・列缺(れっけつ):手首のやや上。のどの乾燥や咳に効果的
・中府(ちゅうふ):鎖骨の下。肺の働きを助け、胸の詰まり感を改善
さらに、背中(肩甲骨の間)に温灸をすると、気の巡りがよくなり、冷えと乾燥の両方に効果が期待できます。
4. 秋の養生ポイント
肺を守るには、生活の中で「潤いを補う」工夫を取り入れましょう。
食養生
・白い食材は肺を養う:梨、れんこん、大根、白きくらげ
・潤いを与える:はちみつ、ごま、豆乳
・辛すぎる刺激物は控えめに:唐辛子、にんにくは乾燥を悪化させる
生活習慣
・加湿器や濡れタオルで室内の湿度を保つ
・深呼吸や軽いストレッチで呼吸を整える
・睡眠をしっかりとって免疫を保つ
・軽いウォーキングで気の巡りを促す
セルフケアのツボ押し
夜のリラックスタイムに「太淵」や「列缺」をやさしく押すと、肺の働きが整いやすくなります。
5. まとめ
秋は乾燥によって肺が弱まり、咳・喉の不快感や肌トラブルが出やすい季節です。鍼灸は肺を潤し、呼吸と免疫を整えることで、乾燥からくる不調を予防できます。
日常生活では、潤いを与える食事や加湿、深い呼吸を意識することが大切です。
肺を守ることは、秋を元気に過ごすだけでなく、冬の風邪予防にもつながります。
今年の秋は、潤いを意識して、からだと心をしっとり整えてみましょう。