1. 目は「肝」の状態を映す鏡
東洋医学では「目は肝の竅(きょう)」と呼ばれます。竅とは感覚器官のことで、目と肝は深くつながっているという考えです。
現代でも、長時間のスマホやパソコン作業で目が疲れると、肩こりや頭痛、イライラが出てくることがあります。これらは単なる眼精疲労ではなく、「肝」の働きが乱れたサインとも解釈できます。
肝は「血(けつ)を蔵する」臓腑で、全身に血を巡らせ、特に夜間には血を貯めて体を休ませる役割があります。この血の巡りが悪くなると、目に十分な栄養が届かず、乾燥感やかすみ目、視力の低下などが起こりやすくなります。
2. 肝と目の不調に現れやすい症状
目の疲れや不快感が続くとき、次のような症状が一緒に出ていませんか?
・ 目がしょぼしょぼする、かすむ
・ 乾燥してゴロゴロする
・ 頭痛やめまいを伴う
・ イライラ、怒りっぽい
・ 生理不順やPMSが強い
これらは「肝血(かんけつ)」の不足や「肝気(かんき)」の滞りによって起こる典型的なサインです。特に女性は月経によって血を消耗するため、目の不調と肝の乱れが出やすい傾向があります。
3. 鍼灸で整える「肝」と「目」
鍼灸治療では、目そのものに針を打つわけではなく、全身の経絡を通して「肝の巡り」を整えます。
よく使われるツボには次のようなものがあります。
太衝(たいしょう) … 足の甲にあるツボで、肝の働きを整え、イライラや目の充血に効果的。
合谷(ごうこく) … 手の甲にある万能のツボ。頭痛や目の疲れに使われます。
睛明(せいめい) … 目頭の近くのツボ。目の充血や疲れをやわらげます。
これらを組み合わせ、肝の気血を巡らせることで、目の不快感だけでなく心身の緊張を解きほぐすことができます。
4. 日常生活でできるセルフケア
鍼灸とあわせて、日常生活でも「肝」を労わることが大切です。
(1)目を酷使しすぎない
・1時間に1回は画面から目を離し、遠くを見て目を休める
・スマホやPCの明るさを調整する
・寝る前はブルーライトを避ける
(2)肝に良い食べ物をとる
・緑黄色野菜(ほうれん草、にんじん、ブロッコリー)
・クコの実(ゴジベリー)、ブルーベリーなど目に良いとされる食材
・酸味のある食べ物(梅干し、柑橘類)で肝の働きをサポート
(3)リラックスを心がける
・深呼吸やストレッチで気の巡りを整える
・軽い運動(散歩やヨガ)が効果的
・十分な睡眠をとり、肝に血を戻して休ませる
5. まとめ
目の疲れは単なる眼精疲労ではなく、「肝の不調を映し出すサイン」でもあります。
肝の働きを整えることで、視界がクリアになるだけでなく、頭痛やイライラ、不眠なども改善されやすくなります。
「五感から整える東洋医学」シリーズ第1回では、目と肝の関係を紹介しました。
次回は「耳鳴り・難聴と腎の関係」をテーマに、耳と体のつながりを解説していきます。