鼻は「肺」の状態を映す鏡
東洋医学では、鼻は「肺」と密接に関わると考えられています。
肺は呼吸を司る臓器であり、外界からの空気を取り入れ、体の隅々に清らかな「気」をめぐらせる役割を担います。鼻はその入り口であるため、肺の機能が弱ると鼻の通りが悪くなったり、鼻水が出やすくなったりします。
また、肺は「皮毛」とも関係が深いとされ、皮膚や粘膜のバリア機能を守る働きがあります。
そのため、免疫力が低下しているときや、体が冷えやすいときには、鼻の粘膜も敏感になり、外界の刺激(花粉、ほこり、ウイルスなど)に過敏に反応してしまうのです。
鼻の不調を引き起こす要因(東洋医学的に)
東洋医学では、鼻の不調は単なる局所的なトラブルではなく、体全体のバランスの乱れから起こると考えます。主な要因には次のようなものがあります。
1.風寒(ふうかん)・風熱(ふうねつ)
外からの冷えや熱の邪気が体に侵入すると、鼻水や鼻づまり、発熱を伴う症状が出やすくなります。
いわゆる「かぜ症状」に近い状態です。
2.肺気虚(はいききょ)
肺のエネルギーが不足していると、鼻粘膜の防御力が低下し、アレルギー性鼻炎や慢性的な鼻づまりになりやすいです。
3.脾虚湿盛(ひきょしつじょう)
消化機能の低下によって体に余分な水分(湿)がたまると、それが鼻水や痰としてあらわれることがあります。
4.腎虚(じんきょ)
慢性的に続く鼻炎や嗅覚障害などは、「腎」の力不足とも関連します。
腎は全身の生命力の源とされ、慢性症状との関係が深い臓腑です。

鍼灸でできること
鍼灸治療では、鼻の症状に直接関わるツボと、全身のバランスを整えるツボを組み合わせて施術します。
局所のツボ
迎香(げいこう/小鼻の横)、印堂(いんどう/眉間)、上迎香などは鼻づまりや鼻水に効果的とされる代表的なツボです。
全身のツボ
肺経や大腸経にある尺沢(しゃくたく)、合谷(ごうこく)、さらには足三里(あしさんり)、腎兪(じんゆ)など、体質に合わせてツボを選びます。
鍼やお灸でツボを刺激することで、気血の巡りを改善し、鼻粘膜の過敏反応を落ち着けたり、免疫力を高めたりすることが期待できます。
鍼灸でのアプローチの特徴
鼻の不調に対して鍼灸が持つ強みは、「症状を抑える」だけでなく「体質そのものを整える」点にあります。たとえば、季節ごとに繰り返す鼻炎や、薬では改善しにくい慢性鼻づまりに対して、体のベースを強くしていくことが可能です。
さらに、鍼灸にはリラックス作用があり、自律神経のバランスを整えることもできます。
ストレスや疲労が鼻炎を悪化させるケースもあるため、全身をみながらアプローチできる点は大きなメリットといえるでしょう。
日常生活でできるセルフケア
鍼灸治療と合わせて、日常の過ごし方も大切です。
・ 体を冷やさない(特に首・背中・足元)
・ 規則正しい睡眠で免疫を整える
・ 消化にやさしい食事を心がける
・ 適度な運動で気血の巡りを良くする
こうした工夫を取り入れることで、鍼灸の効果もより実感しやすくなります。
まとめ
鼻の不調は単なる局所症状ではなく、体全体の状態を反映しているサインでもあります。
鍼灸は鼻そのものに働きかけるだけでなく、体質改善や免疫力向上を目指すことができるため、慢性的に鼻のトラブルを抱えている方には大きな助けとなる可能性があります。
薬に頼るだけでなく、体質から整えていきたい方にとって、鍼灸はひとつの有効な選択肢となるでしょう。
