広場恐怖症とは?
広場恐怖症(Agoraphobia)は、不安障害のひとつです。
「広い場所が怖い」というよりも、その場で発作が起きても逃げられない、助けを求められないという状況に強い恐怖を感じます。
そのため、実際に怖くなるのは駅や電車、バス、人混み、エレベーターなどです。
「また発作が起きたらどうしよう」と考えてしまい、外出が難しくなる人も少なくありません。
よくある症状
広場恐怖症の方が感じる症状には次のようなものがあります。
・動悸や息苦しさ
・めまい、ふらつき
・胸の圧迫感や吐き気
・強い不安感、焦燥感
・外出や一人での行動を避けたくなる
これらは心だけの問題ではなく、体にもはっきりと現れるのが特徴です。
なぜ起こるのか
医学的には、パニック障害から発展するケースが多いとされています。
一度「逃げられない場面で発作」を経験すると、その記憶が恐怖の引き金となります。
東洋医学では「気の巡りが滞り、心と体のバランスが乱れる」と考えます。
特に、心を司る「心(しん)」や、気血を生み出す「脾(ひ)」の弱りが関わることが多いとされます。
鍼灸でできること
鍼灸は広場恐怖症の「恐怖心」そのものを直接なくすわけではありません。
しかし、心と体の両面から働きかけることで、次のような改善が期待できます。
1. 自律神経を整える
不安やパニックが強いときは、交感神経が過剰に働いています。
鍼灸によるツボ刺激は副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせます。
2. 不安感を和らげる
手首の「内関」や耳の「神門」などは、古来より不安や緊張を鎮めるために使われてきました。
呼吸が浅いときや胸がつかえるような症状にも有効です。
3. 睡眠を改善する
不安が続くと眠れなくなり、翌日の不安耐性がさらに落ちます。
鍼灸は自律神経を整えることで眠りの質を高め、回復力をサポートします。
4. 体調を底上げする
東洋医学的には「気血を補う」ことが不安の改善に欠かせません。
胃腸の調子を整える「足三里」、全身の気の流れを高める「百会」などを使い、心身のエネルギーを養います。
よく使うツボの例
神門(しんもん):不安や緊張を落ち着ける
内関(ないかん):胸のつかえ、動悸、吐き気に
百会(ひゃくえ):自律神経の安定、頭のリラックス
足三里(あしさんり):胃腸を整え、体力を底上げ
これらを組み合わせ、その人の体質や症状に合わせた治療を行います。
鍼灸治療のメリット
・薬の副作用がない
・リラックス効果が高い
・体の症状(動悸・胃の不快感・頭痛など)にも同時にアプローチできる
特に「体の不調からくる不安感」を和らげる点で、鍼灸は役立ちます。
治療の流れ
1.まず問診で症状や生活習慣を聞き取り
2.脈や舌、体の状態を確認
3.その日の体調に合わせて数か所のツボに鍼やお灸を施す
刺激はごくやさしく、リラックスして受けられる施術が多いです。
また鍼灸治療は、一度で劇的に症状を取り去るものではありません。
体のバランスを整え、自己回復力を高めることで、不調が出にくい状態をつくっていきます。
そのためには、症状が強く出る前から取り入れる「予防の視点」と、定期的に回数を重ねる「継続の積み重ね」がとても大切です。
まとめ
広場恐怖症は「心の病気」と思われがちですが、実際には体の反応も大きく関わっています。
鍼灸治療は自律神経を整え、体調を改善しながら、不安に対する抵抗力を高めるサポートになります。
「外出が怖い」「人混みがつらい」という方も、体を整えることで少しずつ気持ちに余裕が生まれていきます。
西洋医学の治療と並行しながら、鍼灸を取り入れてみるのもひとつの選択肢です。

