冷え症と冷え性
「冷え症」と「冷え性」は似ている言葉ですが、実は意味が異なります。
「冷え症」は手足や体の冷えによって、日常生活に支障をきたす状態をいいます。
「冷え性」は検査で異常はみられないが、特定の部位が冷える状態をいい、体質として捉えます。
西洋医学では、「冷え症」は治療の対象となることが多いです。
一方、東洋医学ではどちらの状態も治療の対象と考えます。
冷え症とむくみ
冷え症と浮腫みは深く関係しています。どちらも血行不良が原因となることが多いですが、冷え症によって血流が滞ると、体内の水分代謝も低下し、むくみやすくなります。
また、冷えによって自律神経のバランスが乱れると、血管の収縮が続き、余分な水分が体内に溜まりやすくなります。
原因
・自律神経の乱れ
ストレスや不規則な生活によって自律神経が乱れると、血管の収縮が強まり血流が悪くなります。
・筋肉量の不足
筋肉は血液を送り出すポンプの役割を果たしています。特に下半身の筋力が低下すると、血液が心臓に戻りにくくなり、足のむくみを起こしやすくなります。
・女性ホルモンの影響
女性は男性に比べて筋肉量が少なく、月経周期によってホルモンバランスが変動するため、冷えやすく、むくみやすい傾向にあります。
・食生活の乱れ
塩分の摂りすぎは体内に水分を溜め込み、むくみの原因となります。また鉄分やビタミンB群が不足すると、血行が悪くなり冷え症を引き起こします。
・運動不足
運動不足により血流が滞ると、体温が上がりにくくなり、むくみや冷えが生じます。
種類
冷え症とむくみには、いくつかのタイプがあります。
・末端冷え症:手足の先が特に冷たくなるタイプで、血流の悪化が主な原因です。
・内臓冷え症:お腹や腰が冷えやすく、胃腸の不調を伴うことが多いです。
・全身冷え症:体全体が冷えている状態で、代謝の低下や甲状腺機能の低下が関係していることがあります。
・むくみ冷え症:むくみと冷えが同時に起こるタイプで、水分代謝の悪化が原因となります。
自律神経との関係
冷え症やむくみは、自律神経の乱れと深い関係があります。自律神経は体温調節や血流、水分代謝をコントロールしているため、ストレスや生活リズムの乱れなどでバランスが崩れると、血管が収縮し血流が悪化します。その結果、手足の冷えや水分代謝の低下によるむくみが現れます。特に、交感神経が過剰に働くと血管が収縮しやすく、副交感神経の働きが弱まると水分排泄も滞りやすくなります。
冷え症と東洋医学
東洋医学では、冷え症やむくみは「気・血・水」のバランスが崩れることで発生すると考えられています。
・気の不足(気虚):エネルギーが不足し、体温を維持する力が低下します。
・血の滞り(瘀血):血行不良によって冷えやむくみが発生します。
・水分代謝の異常(水毒):体内の水分が滞ることで、むくみや冷えが引き起こされます。
東洋医学では、これらのバランスを整えることで、冷えやむくみの改善を目指します。
鍼灸治療の効果
鍼灸治療は、冷え症やむくみに対して非常に有効な手段の一つです。ツボを刺激することで血流を改善し、自律神経のバランスを整えます。鍼やお灸によって特定のツボを刺激することで、交感神経と副交感神経のバランスを整え、血行を促進し、内臓機能を活性化します。例えば、足の「三陰交」やお腹の「関元」などのツボは、体を温める効果があり、冷えやむくみの改善に役立ちます。また、全身の巡りを良くすることで、体の内側から体質改善を目指すことができます。
セルフケア
冷え症やむくみを改善するには、毎日のセルフケアが重要です。
ウォーキングや軽いストレッチは血流を促進し、筋肉のポンプ作用を高めるため、下半身のむくみや冷えの改善に効果的です。
また、毎日湯船に浸かる習慣をつけることも大切です。38〜40℃のぬるめのお湯に20分ほど浸かると体が芯から温まり、副交感神経が優位になることで、血行促進やリラックス効果が得られます。入浴後は足先や手先をマッサージし、末端の血流をさらに高めるのもおすすめです。
食事面では、体を温める食材(生姜、ねぎ、にんじん、かぼちゃなど)を積極的に取り入れることが勧められます。冷たい飲み物や生野菜の摂りすぎは体を冷やすため、控えめにしましょう。
さらに、ふくらはぎを軽くもみほぐすマッサージや、足首をぐるぐる回す運動も簡単で効果的です。血液やリンパの流れを促進し、むくみ防止につながります。
ストレス管理も大切です。深呼吸や瞑想を取り入れ、心身をリラックスさせる時間を意識的に作ることで、自律神経のバランスが整いやすくなります。