耳のつまりとは?
「耳がふさがったように感じる」「声がこもって聞こえる」「水の中にいるような感覚がする」――
こうした耳の閉塞感を、多くの方が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
飛行機の離着陸や標高の高い場所に行ったときなど、一時的に耳がつまることはよくあります。
ところが、原因がはっきりせず長く続く場合には、生活に支障をきたすほどの不快感につながります。
耳のつまりの原因
耳のつまりは、さまざまな要因によって引き起こされます。
耳管の働きの乱れ
耳と鼻をつなぐ「耳管」がうまく開閉できず、気圧の調整ができないと耳のつまりを感じやすくなります。
中耳炎や副鼻腔炎
炎症や鼻水の影響で耳に液体がたまり、閉塞感を生じることがあります。
ストレスや自律神経の乱れ
緊張や疲労が続くと、耳周囲の血流や神経の働きに影響を与え、つまり感を感じることがあります。
メニエール病や突発性難聴
めまいや聴力低下を伴う場合には、耳の病気が隠れている可能性もあります。
原因は一つではなく、体調や生活習慣、環境によって複合的に起こることも多いのです。
西洋医学での対応
耳鼻科では、耳のつまりの原因を診断し、薬物療法(抗炎症薬、抗生物質、ステロイド、血流改善薬など)が用いられます。
症状が軽ければ経過観察で改善する場合もありますが、慢性的に続くと「薬をやめるとまた戻る」というケースも少なくありません。
東洋医学から見た耳のつまり
東洋医学では、耳の働きは「腎」と深く関わりがあるとされています。
また、耳のつまりは「気血水(きけつすい)」の巡りが滞ることで起こると考えられます。
気の滞り
ストレスや緊張で「気」が上に昇り、耳の流れを阻む
血の滞り
肩や首のこりで血流が悪くなり、耳周囲の循環が低下する
水の滞り
体内の水分代謝が乱れ、耳や鼻の周囲に余分な水がたまる
こうした滞りが複合的に影響し、耳のつまり感を引き起こすと考えられます。
鍼灸でのアプローチ
鍼灸では、耳のつまりそのものを直接「治す」のではなく、全身のバランスを整えることで症状をやわらげていきます。
よく使われるツボ
・耳周囲のツボ:翳風(えいふう)、聴宮(ちょうきゅう)など耳の循環を整えるツボ
・首や肩のツボ:風池(ふうち)、肩井(けんせい)で血流を改善し、緊張を緩める
・全身の調整のツボ:合谷(ごうこく)、足三里(あしさんり)、太衝(たいしょう)などで自律神経や消化機能を整える
鍼で筋肉のこわばりをゆるめ、灸で温めることで血流を促進し、耳周囲の循環を改善していきます。
鍼灸が期待できる効果
・耳周囲の血流改善によるつまり感の軽減
・自律神経の調整によるストレスの緩和
・首肩のこりや眼精疲労の改善
・睡眠の質向上による体調全体の回復
慢性的な耳のつまりに悩む方の中には、鍼灸を取り入れることで「耳が軽くなった」「音がクリアに聞こえるようになった」という変化を感じる方もいます。
生活習慣でできる工夫
鍼灸と合わせて、日常生活の工夫も大切です。
・十分な睡眠と休養をとる
・首や肩を冷やさないようにする
・長時間のスマホやPC作業の合間にストレッチを行う
・塩分やアルコールを控え、体内の水分バランスを整える
・強いストレスを溜めず、リラックスの時間を持つ
小さな工夫の積み重ねが、耳の健康につながります。
まとめ
耳のつまりは、一時的な不快感から慢性的な症状まで、原因や背景は人それぞれです。
薬だけではなかなか改善しない場合や、再発を繰り返す場合には、東洋医学的な視点から全身を整えることが役立つかもしれません。
鍼灸は、耳の周囲だけでなく全身の巡りを改善し、自律神経や体質に働きかけることで、耳のつまり感の軽減をサポートします。
「耳がふさがっている感じが続く」「検査では異常がないけれど不快感がある」という方は、一度鍼灸でのケアを取り入れてみてはいかがでしょうか。
体のバランスを整えることで、耳も心も軽やかに過ごせるようになるはずです。

