近視とは?
近視は「遠くがぼやけて見える」状態を指します。眼球の奥行きが長くなったり、角膜や水晶体の屈折力が強すぎたりすることで、網膜の手前にピントが合ってしまうのが原因です。
近視には、遺伝的要素に加えて、長時間のスマホやパソコン使用など生活習慣も大きく影響しています。
特に現代社会では若い世代を中心に近視人口が急増しており、今や国民的な課題ともいえる状況です。
なぜ近視になるのか?
大きく分けて2つの要因があります。
1.遺伝的なもの
家族に近視の方が多い場合、眼球の形や網膜の性質が似ているため近視になりやすい傾向があります。
2.環境的なもの
勉強やデスクワーク、スマホなど近くを見る時間が長いと、目の筋肉が緊張し続けて調整力が低下します。
さらに屋外で遠くを見る機会が減ることも悪影響となります。
こうした要素が重なることで、視力が低下していきます。
東洋医学から見た近視
東洋医学では「目は五臓の精華」といわれ、目の働きは全身のバランスと深く関係すると考えられています。特に「肝」と「腎」が目の健康に関わる重要な臓です。
肝の働き
血液を蓄え、全身に巡らせる。肝の血が不足すると、目が乾きやすい・かすみ目になる。
腎の働き
生命力や成長、老化に関わる。腎の力が弱まると視力の低下や眼精疲労につながる。
つまり近視は、目だけの問題ではなく「全身の気血や臓腑のバランスの乱れ」とも捉えられるのです。

鍼灸でのアプローチ
鍼灸は近視そのものを治すというよりも、「目の疲れを和らげ、視力低下の進行を抑え、生活の質を高める」ことを目的とします。
1.血流を改善する
目の周りや全身のツボを刺激することで、目に必要な血流や栄養を送りやすくします。
2.自律神経を整える
鍼灸にはリラックス効果があり、交感神経と副交感神経のバランスを整えることで、眼精疲労やストレスによる緊張を和らげます。
3.体質改善
「肝」や「腎」の働きを補うツボを使うことで、根本からのケアを目指します。
特に慢性的な疲れや睡眠不足がある方に有効です。
よく使われるツボ
・攅竹(さんちく):眉頭の内側。目の疲れや充血に効果的。
・晴明(せいめい):目頭のやや上。かすみ目や眼精疲労に。
・太陽(たいよう):こめかみのやや外側。目の緊張や頭痛に。
・合谷(ごうこく):手の甲、人差し指と親指の間。全身の調整に。
・足三里(あしさんり):膝下にある代表的な養生ツボ。体力を補い疲労回復に。
これらのツボを組み合わせ、全身の状態を見ながら施術を行います。
日常生活でできる工夫
鍼灸治療に加えて、生活習慣を整えることが視力ケアには欠かせません。
・1時間ごとに目を休ませる(遠くを見る)
・スマホやPCを使うときは画面との距離を30cm以上あける
・太陽光を浴びる(屋外活動が近視予防に有効といわれています)
・睡眠を十分にとる
・栄養バランスの取れた食事(特にビタミンA・ルテインなど目に良い成分)
こうした習慣を組み合わせることで、鍼灸の効果をより高めることができます。
まとめ
近視は現代人にとって避けがたい問題ですが、鍼灸は目の周囲だけでなく全身のバランスを整え、目の疲れや不快感を軽減し、進行を緩やかにするサポートが可能です。
目は単なる「視覚の器官」ではなく、全身の健康状態を映し出す鏡。
定期的なケアを通じて体全体を整えることが、結果的に目の健康を守ることにつながります。

