過敏性腸症候群(IBS)とは?
現代社会では、ストレスや生活リズムの乱れから「お腹の不調」を訴える人が増えています。
その中でも特に多いのが「過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)」です。
検査をしても腸に明らかな異常が見つからないのに、腹痛や下痢、便秘などが続く状態を指します。
健常者の20%前後はIBS症状をもち、有訴者の約20%は医療機関を受診すると言われています。
消化器官疾患の中で最も頻度の高い疾患となります。
性比は、男:女=1:2と女性に多く、発症年齢は思春期や青年期、壮年期の若年層に多い傾向にあります。
不安やうつ状態、ストレスなどの心理的要因が深く関わっているといわれています。
過敏性腸症候群(IBS)の種類
主なタイプは以下の4つです。
①下痢型:緊張やストレスで急にお腹が痛くなり、下痢を繰り返す。
②便秘型:ガスがたまりやすく、便が硬くて出にくい。
③混合型:下痢と便秘を交互に繰り返す。
④分類不能型:上記に当てはまらないが腹部不快感が続く。
特徴的なのは、ストレスや環境の変化で症状が悪化することです。
職場や学校などで緊張した場面になると腹痛が出たり、外出が怖くなってしまう方も少なくありません。
東洋医学でみる「腸と心」の関係
東洋医学では、腸の不調は「脾(ひ)」や「肝(かん)」の
バランスの乱れと深く関係すると考えられます。
脾(ひ)は、食べ物を「気」と「血」に変える消化吸収の源。
冷たいものや不規則な食事、過労によって弱ると、下痢や軟便を引き起こします。
肝(かん)は、気の流れや情緒をコントロールする臓。
ストレスや緊張で肝が滞ると、腸の働きにも影響し、便秘やガス、腹部の張りを感じやすくなります。
このように、心のストレス(肝)と消化の働き(脾)は表裏一体。
感情の乱れが腸に伝わり、腸の不調がまた気分の落ち込みを招く——これがIBSの特徴的な悪循環です。
鍼灸によるアプローチ
鍼灸治療では、症状を引き起こす根本的なバランスの乱れを整えることを目的とします。
① 自律神経の調整
鍼を打つことで副交感神経が優位になり、緊張していた腸がゆるみます。
ストレスで過敏になった腸の動きを穏やかに整え、腹部の不快感を軽減します。
② 血流と内臓機能の改善
お腹や背中のツボを刺激することで、胃腸周囲の血流を促進します。
血の巡りが良くなることで、消化吸収機能が改善し、便通の安定にもつながります。
③ ストレス緩和と心身のリラックス
鍼灸は筋肉のこわばりだけでなく、心の緊張をゆるめる効果もあります。
施術中に眠くなる方が多いのは、副交感神経がしっかり働いている証拠。
定期的に続けることで、イライラや不安感も和らいでいきます。
よく使われるツボ
〇中脘(ちゅうかん):胃腸の働きを整える代表的なツボ。
〇天枢(てんすう):便秘・下痢のどちらにも効果的。
〇気海(きかい)・関元(かんげん):下腹部の冷えや虚弱体質の改善。
〇足三里(あしさんり):消化吸収を高め、体力を補う。
〇太衝(たいしょう):ストレスで滞った「気」をめぐらせる。
生活習慣との併用が大切
鍼灸の効果を持続させるためには、日常生活の見直しも欠かせません。
・規則正しい食事(冷たいもの・刺激物を控える)
・夜更かしを避け、睡眠のリズムを整える
・深呼吸やストレッチなどでリラックス習慣をつくる
・「完璧にしよう」と頑張りすぎない
心と体のリズムをそろえることが、腸の安定にもつながります。
まとめ
過敏性腸症候群は、心と体のバランスが崩れたサインでもあります。
薬で一時的に抑えることはできても、根本的に改善するには
「自律神経」と「内臓の働き」を同時に整えることが大切です。
鍼灸は、ストレスに敏感な腸をやさしく整え、体の内側から「落ち着く力」を取り戻す治療法です。
不安や緊張を感じやすい方、薬に頼りたくない方、再発を繰り返している方にもおすすめです。
少しずつ心と体がほぐれていくと、お腹も自然と穏やかに。
「またあの不安が来るかも」という気持ちが、
「今日は大丈夫かも」に変わる日を、鍼灸はそっと支えています。
お困りの方は是非一度、高田馬場はりきゅう院にお問い合わせください。