自律神経とは何か
私たちの体は「交感神経」と「副交感神経」という2つの働きによって、体のリズムを保っています。
交感神経は“活動モード”、副交感神経は“休息モード”のスイッチのようなもの。
朝は交感神経が優位になって体が動き出し、夜は副交感神経が働いて眠りにつく――これが自然なリズムです。
しかし、ストレスや不規則な生活、スマホやPCによる夜の刺激が続くと、この切り替えがうまくいかなくなります。
本来、朝に上がるはずの交感神経が働かず、体が“休息モード”のままで起きられない、という状態になるのです。

東洋医学でみる「朝起きられない」体のサイン
東洋医学では、朝スッキリ起きられない状態を「気の不足」や「気の滞り」として捉えます。
“気”とは、生命活動のエネルギー。これが足りなければ体は動かず、滞れば重だるさや無気力感が出ます。
「気虚(ききょ)」タイプ
寝ても疲れが取れず、朝起きても力が入らないタイプ。
胃腸が弱く、食欲がない、息切れしやすい、顔色が白っぽいなどの特徴があります。
慢性的な疲れや、無理なダイエット、栄養不足などでエネルギーが枯渇していることが多いです。
「気滞(きたい)」タイプ
ストレスが多く、気分が晴れない、ため息が多い、肩や首のこりが強い人に見られます。
気が全身をスムーズに巡らないため、朝から体が重く感じられます。
「陰虚(いんきょ)」タイプ
夜遅くまで起きていたり、慢性的な緊張で体に熱がこもるタイプ。
寝つきが悪い、眠りが浅い、寝汗をかく、のどが渇くなどの症状が特徴です。
質の良い眠りが取れないため、朝の目覚めがすっきりしません。
このように、“朝起きられない”といっても、背景にある体質や生活習慣によって原因は異なります。
東洋医学では、症状だけでなく「なぜそうなったのか」を見極め、全体のバランスを整えることを重視します。
鍼灸でできるサポート
鍼灸では、自律神経のバランスを整え、体の“朝スイッチ”を自然に入れられるようサポートしていきます。
① 自律神経の切り替えを助ける
首や背中、腹部などのツボを使い、交感神経・副交感神経のバランスを整えます。
特に「風池(ふうち)」「百会(ひゃくえ)」「天柱(てんちゅう)」などのツボは、自律神経を整える効果が高く、施術中に深いリラックス状態になる方も多いです。
「施術の途中で眠ってしまった」「終わったあと頭がスッキリした」と感じる方も少なくありません。
② 気血の巡りを改善
「気」や「血(けつ)」の流れが滞っている人には、「合谷(ごうこく)」や「足三里(あしさんり)」などを使って巡りを促します。
体の内側から温まり、だるさや重さが取れていくのを実感できます。
③ 睡眠の質を上げる
夜にしっかり副交感神経が働くように調整し、「眠りの質」から整えるのも鍼灸の得意分野です。
ツボの刺激によってリラックスホルモンが分泌され、自然な眠気が訪れるようになります。
結果として、朝の目覚めが軽くなり、1日のスタートが楽になります。
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3つのタイプ(気虚・気滞・陰虚)を東洋医学的にどう改善していくのか
気虚(ききょ)タイプの改善法
特徴:疲れやすい・朝起きても力が入らない・胃腸が弱い・顔色が白い
< 鍼灸 >
足三里(あしさんり):胃腸の働きを助け、気を補う代表ツボ
関元(かんげん):体の中心のエネルギーを高めるツボ
中脘(ちゅうかん):胃腸の調整、食欲不振の改善
鍼やお灸で“気”を補い、内臓の働きを高めていきます。弱った胃腸が元気になると、朝のだるさも軽くなります。
< 養生 >
温かい食事・白湯をとる
睡眠をしっかり確保(23時までに寝る)
無理な運動やダイエットを避ける
< 食養生 >
山芋、かぼちゃ、鶏肉、米、ハチミツなど“気を補う食材”を。
冷たい飲み物や生野菜の摂りすぎは控えます。
気滞(きたい)タイプの改善法
特徴:ストレスが多い・ため息が多い・胸やお腹が張る・朝から重い
< 鍼灸 >
太衝(たいしょう):ストレスによる気の滞りを解消
内関(ないかん):胸のつかえや不安感に
合谷(ごうこく):気の巡りを全身に広げるツボ
滞っていた“気”を流すことで、体も気分も軽くなります。治療中に深呼吸が自然と出る方も多いです。
< 養生 >
運動やストレッチで気を巡らせる
深呼吸、音楽、香りなどでリラックス
感情を抑え込まず、軽く口に出して吐き出す
< 食養生 >
柑橘類、しそ、生姜、ネギ、ミントなど“香りのある食材”で巡りを助ける。
甘いもの・油っこいものの摂りすぎは「気滞」を悪化させるので注意。
陰虚(いんきょ)タイプの改善法
特徴:眠りが浅い・のぼせる・寝汗・喉が渇く・夜更かしが多い
< 鍼灸 >
照海(しょうかい):体の潤いを補い、のぼせを鎮める
太谿(たいけい):腎を補い、深い眠りを促す
三陰交(さんいんこう):ホルモンバランスと血流改善
陰虚タイプは“冷やす”より“潤す”が大事。熱を鎮め、体の内側に潤いを戻します。
< 養生 >
夜更かしを避け、0時前には就寝
カフェイン・刺激物を控える
パソコンやスマホの光を寝る1時間前には減らす
< 食養生 >
黒ごま、豆乳、ゆり根、白きくらげ、梨など“潤いを補う食材”を。
スパイスやアルコールは控えめに。
共通して大切なこと
どのタイプでも共通して大事なのは、
・ 無理せず、体の声を聞くこと
・ 朝日を浴びること(交感神経を自然にオンにする)
・ 呼吸を深くすること(気の巡りを促す)
まとめ 〜朝を軽くするために〜
朝起きられないという悩みは、怠けではなく、体からのサインです。
東洋医学では「心身一如(しんしんいちにょ)」、つまり体と心はひとつと考えます。
心の疲れも体の不調も、気の流れや自律神経の乱れとして現れるのです。
鍼灸は、無理に体を動かすのではなく、“自然に動ける状態”へ導く施術。
朝、目覚めた瞬間に「少し軽いかも」と感じる、その積み重ねが本当の回復につながります。
「朝がつらい」「寝ても疲れが取れない」という方は、体のバランスを見直すサインかもしれません。
鍼灸で心と体のスイッチを整え、穏やかな朝を取り戻してみませんか。

