うつ病の鍼灸治療 高田馬場はりきゅう院
うつ病は脳内のトラブルが原因で心が弱る病気
うつ病がどうして起こるかについてはまだわからない点もありますが、脳内の情報を伝えるセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質が深く関わっているといわれてきました。また最近注目されているのが、脳内の扁桃体の役割です。扁桃体から分泌されるストレスホルモンが過剰になると、意欲の低下や行動の低下などをまねき、うつ病を引き起こすのではないかといわれています。
うつ病の主な症状
1感情面の症状(抑うつ気分)
・いつまでもゆううつな気分がつづく
・悲しい、さびしい、むなしい
・不安が頭から離れない
・焦燥感にとらわれる
2意欲・行動面の症状
・何もする気になれず、おっくうになる
・集中力、決断力の低下
・出かける気にならない
・だれかと話すのが苦痛になる
3思考面の症状
・考えがまとまらない
・極端に悲観的になる
・マイナス思考におちいる
・自分を責める(自責感)
4身体症状
・睡眠障害
・倦怠感、疲労感
・食欲不振
・肩こり、首の痛み、腰痛
うつ病の症状は精神的な症状と身体的な症状に分けられます。身体的症状では睡眠障害はほとんどの患者さんにあらわれ、うつ病の不眠の特徴としては、早朝覚醒があげられます。不眠によって熟睡できないため、疲労感が残ります。
うつ病になるきっかけ・誘因
遺伝的要因
うつ病の発症には遺伝がある程度関係するとされています。その人自身の生活環境や考え方、ストレスなどが複雑にからみあって引き起こされます。
性格的要因
うつ病になりやすい性格としては、まじめで几帳面、責任感が強いといった人です。社会生活においては良い性格であるのですが、我慢や無理をして知らず知らずのうちにストレスをためてしまうとも考えられます。
ストレスとの関係
過剰なストレスは、うつ病の誘因の一つとなります。
急激な環境の変化
過労、リストラ、配置転換、結婚、出産など、人生上の大きな節目や出来事、急激な変化がうつ病のきっかけになることがあります。
上記のようにうつ病の発症には、複数の要因が関与しています。
ストレスが与える影響
ストレス反応は「警告反応期」「抵抗期」「疲弊期」の3段階に分けられます。まず「警告反応期」では、突然のストレスにより体温や血圧、血糖値が一時的に低下し、筋肉や神経系の活動も抑制されますが、その後、体がストレスに適応しようと反応し、これらの数値が上昇します。
次に「抵抗期」では、ストレスに対する適応が進み、神経系や内分泌系、免疫系が働いて抵抗力が高まります。心身はストレスに対してバランスを保とうとし、通常よりも強い抵抗力を示します。
しかしストレスが長期間続くと、やがて適応エネルギーが枯渇し、「疲弊期」に入ります。この段階では抵抗力が徐々に低下し、心身の機能が衰え、うつ病などの精神的障害や身体的な不調が現れ、最悪の場合は死に至ることもあります。
適度なストレスは活動のエネルギー源となりますが、慢性的な強いストレスは心身に深刻な悪影響を及ぼします。
ストレスホルモンと脳内の変化
強いストレスを受け続けるとうつ病になる背景には、脳内の扁桃体という部位の働きが深く関与しています。扁桃体は恐怖や不安、悲しみなどの情動を生み出す役割を担い、ストレスを感じると活発に働き、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を促します。しかし、長期間強いストレスが続くとホルモンが過剰に分泌され、脳の神経細胞の修復や活性化に必要な物質が減少し、神経細胞が萎縮します。その結果、意欲や行動が低下し、うつ病が発症しやすくなると考えられています。
東洋医学からみたうつ病
東洋医学では、うつ病は「気・血・水」の巡りの乱れや、臓腑(特に心・脾)の機能低下が原因とされます。心と体は一体と考え、精神的な不調も身体症状と密接に関係していると捉えます。例えば、気分の落ち込みや不眠、動悸、食欲不振など多様な症状を「証」として総合的に診断し、個々の体質や状態に合わせて適切なツボを取り鍼とお灸で治療します。西洋医学と異なり、心身全体のバランスを整えることを重視しています。
うつ病に対する鍼灸の効果
鍼灸はうつ病による精神的症状、身体的症状に対して、以下のような作用で効果が期待されています。
神経系や自律神経のバランスを整える
鍼灸治療は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドーパミン、エンドルフィンなどの分泌を促進することが研究で示されています。
これらの物質は、痛みの抑制やストレスの軽減、精神の安定や幸福感の向上に寄与します。また、ノルアドレナリンの放出増加も報告されており、うつ症状の改善にも関与すると考えられています。鍼灸治療は自律神経系にも作用し、心身のバランスを整える効果が期待できます。
ストレスホルモンの分泌を抑え、ストレスを軽減
鍼灸治療は、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制し、心身の緊張を和らげる効果が報告されています。また、副交感神経の働きを高めてリラックス状態を促し、セロトニンやエンドルフィンなど精神を安定させる物質の分泌も促進します。
このためストレスが原因とされるうつ病の治療にも有効とされています。
血流やリンパの流れを改善させ、代謝を活性化
鍼や灸の刺激によって血管が拡張し、血流が促進されることで、冷えやむくみ、痛みの軽減が期待できます。
また、筋肉の緊張を緩め、圧迫されていた血管を開放し、発痛物質や老廃物の排出も促進します。血流が良くなることでリンパ管の動きも活発になり、リンパの流れも改善され、疲労感の軽減につながります。
これらの作用により、鍼灸はうつ病や関連するさまざまな症状の緩和に役立つと考えられています。