耳管開放症とは?
耳管解放症は、中耳にある耳と鼻を繋ぐ「耳管」が何かしらの原因で開ひっぱなし状態(又は開いた時間が長い状態)になり、自分の声や呼吸音が響き不快な状態が続きます。
◯耳管って何??
耳の穴の奥には鼓膜があり、鼓膜より中枢に入ると中耳と呼ばれるエリアに耳小骨という3つの小さい骨があります。この小さい骨が鼓膜と内耳を繋いで音を伝達しています。この中耳というエリアは、小さな空間で鼓室と言われ、鼓室の下部には咽頭鼻部へつなぐ耳管という管があります。
耳管の主な働きは、①調圧、②排泄、③防御です。
①調圧
耳管は普段は閉鎖しています。
あくびや嚥下などにより口蓋帆張筋が収縮することにより中耳腔圧を調整しています。
この調圧機能は、飛行機に乗った時の急激な圧変化による耳の不快感を調整するものです。
②排泄
耳管の中は、線毛円柱上皮という毛で覆われています。線毛先は咽頭側へ向かい鼓室内の分泌物などを咽頭へ排泄しています。
③防御
耳管は普段閉鎖している事で異物や細菌などから中耳を守っています。
原因と症状
原因
耳管解放症は珍しい病気ではありません。
ですが、未だ原因がわからない事も多く様々な原因が示唆されています。
ストレスや急激なダイエット、妊娠や経口避妊薬、自律神経失調症、加齢などがあり、先天的に構造の弱さなどもあるようです。
主に考えられるのは、耳管という管を開け閉めする機能が低下する機能性障害と考えます。
耳管は、脂肪組織と筋肉から構成されていて、急激にやせると耳管の周囲の脂肪組織が一緒に減って耳管が開いたままになります。
やせた事が発症原因のきっかけになる事は良くありますが、体重を元に戻しても耳管周囲が太るとは言えず症状が良くなる事は考えにくいと思います。
症状
症状は、自分の声が響く自声強聴や、耳がつまる感覚(耳閉感)、自分の呼吸の音も大きく聞こえる自己呼吸音聴取などがあり、症状が頻繁に起こればとても強いストレスになります。
耳管解放症と併発する事が多いのが自律神経失調症で、不定愁訴を伴う事も少なくありません。
西洋医学では、検査数値に異常が出ないと原因不明となり、うつ病と誤診される事もあるようです。
耳管解放症は、中耳の血流障害が症状に影響していると考え、症状が出ている側を下にして寝ると血行が良くなり症状は楽になります。深いおじぎも血管が圧迫をして耳管が狭くなり一時的に症状が軽くなります。
東洋医学では
耳の疾患は東洋医学的に診ると「腎」との関係性が深いと考えますが、耳管開放症は「肺.肝」の機能低下とみます。
五臓六腑の「肺」は気を体内に取り込み、体中に広げる作用や体内の水分代謝を調整する作用があります。
皮膚を潤し外からの邪気を防ぐ働きも担っています。この「肺」の機能が低下すると外邪(外からの刺激)の影響を受けやすくなります。
五臓六腑の「肝」は身体の血液の循環に関係し、機能が低下すると「気.血」が滞ります。
先天的に身体の弱い部分に症状が出やすくなると考えます。
耳管解放症の治療
西洋医学での治療は
①ルゴール塗布
耳管にルゴール液を塗りあえて耳管を腫れさせ耳管を閉じさせる治療です。
一時的な効果が期待できます。
②食塩水点鼻
食塩水を点鼻し、食塩水が耳管内に染み渡る事で一時的に狭くなると考えられています。
③鼓膜パッチ療法
鼓膜に医療用テープを貼り鼓膜の動きを制限させ一時的に症状が軽減します。ただテープが剥がれると症状は再発します。
④耳管ピン
手術で耳管の中にシリコンの耳管ピンという器具を入れる事で強制的に耳管を狭くします。
この治療法は耳管の主な機能である調圧(気圧の調整)が難しくなります。
長期的な術後観察と評価が必要です。
当院の治療
耳管解放症は、自律神経失調症を併発する可能性もあり、当院ではまず、自律神経測定器で交感神経.副交感神経のバランスを確認し、自律神経機能の調整を目的とした治療を行います。
僧帽筋や胸鎖乳突筋などの筋肉の過緊張が続くと、耳の血行不良に繋がります。それらの筋をほぐすことで血行不良の改善を目指し「腎.肺.肝」の重要な経穴を刺激することで「腎.肺.肝」の働きを調整していきます。
肝火が上炎しておこる耳の疾患は、太衝穴.肝兪穴.丘墟穴などに瀉法を行い効果を出していきます。
・肝火上炎とは、「肝」の気の鬱結が長期化したことで生じる病態で、上半身を中心に激しい症状を特徴とします。具体的には、イライラ、怒り、頭痛、めまい、耳鳴り、難聴、眼の充血、不眠などが挙げられます。
最後に
日々、気をつけたい3つの事。
①ストレスを溜めない
②適度に身体を動かす(激しい運動は控える)
③適度な休息と睡眠
五臓六腑の「肝」の病態があれば、精神刺激などで症状増悪する事もあります。
仕事や生活環境、プライベートの人間関係など、改善が難しい場合も多いですが、耳管の機能性障害をおこす原因は、日常生活で受けるストレスや心配事から連動する事が考えられます。
身体の不調が耳に異常を起こしています。
日頃からこまめな休息でストレス緩和を心がけましょう。