逆子(骨盤位)とは
胎児の頭が母体の骨盤に向かい、分娩がスムーズに行われる胎位を「頭位」といいます。
胎児の頭が横向きの姿勢を「横位」、
胎児の殿部、膝、足など骨盤以下のすべての部位が母体の骨盤に向かうものを「骨盤位」といわれ、通称「逆子」といわれます。
逆子の原因
胎児は、子宮の形態、子宮の収縮、胎動、母体と胎児の体位などの影響により、回転することで逆子の状態から頭位にまわります。
逆子は、本来の子宮の形に異常を生じたり、胎児の発育の遅れが起こったり、胎動の減少や、胎児の身体、とくに関節の状態などにより、胎児が自然な回転、自己的な回転が妨げられるといわれています。その結果、回転のタイミングをのがして頭が上の状態に留まってしまうと考えられています。
しかし、逆子の原因については、未だに不明なことが多く明らかではありません。
明らかな原因がない場合は、身体の冷えやストレスによる自律神経の乱れが考えられるといわれています。
東洋医学からみた逆子
東洋医学では、逆子のことを「胎位不正」といいます。
逆子は、「気血不足、気滞、脾虚」により、胞宮(子宮)への気血のめぐりが悪くなるために、胎児の運動力の低下、胎動が減少しておこると考えられています。
気血不足、気滞、脾虚かどうか診断したうえ、鍼灸師は患者様に合ったツボを選択していきます。
逆子のツボ
☆至陰
足の小指の付け根、外側に位置する
☆三陰交
足の内くるぶしの上、指4本分上に位置する
至陰、三陰交への刺激は、脊髄性、上脊髄性の自律神経反射を起こし、臍帯動脈や子宮動脈を拡張して、子宮への動脈血流増加を促します。
その結果、子宮の血流量が増え、子宮の緊張が緩み、胎児が返りやすくなると考えられています。
逆子の治療
逆子の治療は、一般的に36週以前に治療することが効果的といわれています。
これは、この時期に子宮内でまだ胎児が動けるスペースが確保されており、改善する可能性が高い時期といわれています。
逆子の治療は、逆子の特攻穴といわれる「至陰」へのお灸をします。
至陰へのお灸は、熱感を感じる強度で刺激することで、胎動が活発になります。
妊婦さんは気血不足のため、下半身まわりの冷えやむくみを感じやすく、温かさを感じるくらいまで下半身にある「三陰交」にもお灸をしていきます。
至陰と三陰交のお灸で逆子が矯正されない場合は、気血不足、気滞、脾虚かどうか診断したうえ、患者様に合ったツボを選択していきます。
しかし、子宮の奇形、多胎妊娠、妊娠高血圧症候群、前置胎盤の場合は不適用となります。
また、過短臍帯(臍帯が短い)、臍帯巻絡(臍帯が胎児に巻きついている)、羊水量が著しく少ない、などがみられる場合は、鍼灸治療による矯正は難しいと考えられています。
症例
【30代 第2子、妊娠33週目】
第1子は逆子の経験はなく、今回はじめてだったとのこと、妊娠初期からずっと逆子
手足の冷えを元々感じやすい
汗かきで代謝はいいが、汗をかくと冷えて熱が逃げやすい
(治療経過)
・1回目
触診すると足の冷えが強い
とくに三陰交や足先、足底が冷えているため、温めることを目的にお灸を行った。
背中、腰まわりのコリも強かったため、横向きで首から腰にかけて筋緊張の緩和を行った。
治療中、お灸しているときに胎動を感じた。
3~4日に1回のペースで治療をしていくことを伝え、
自宅でもセルフケアとして至陰、三陰交にお灸をしていただく。
・2回目
赤ちゃんの位置が変わり、胎動の強さも大きくなった気がする
まだ足には冷えがあったため、足全体が温まるように治療した
治療後は身体がポカポカする
3日後の検診で逆子が改善したと報告があったため、治療終了とした。
【30代 第1子、妊娠32週目】
在宅でデスクワークのため慢性的な首肩こり、手足の冷え、疲労感がある
緊張すると汗をかきやすい
(治療経過)
・1回目
身体全体的に冷えているため、お灸や赤外線で温まるように治療していく
熱めなお灸は苦手なため、調整しながらお灸していく
首肩こりがあるので、横向きで首肩の筋緊張を優しめの刺激で緩和していく
治療中、至陰へのお灸で胎動が活発になる
週2回ペースで来院していただき、
自宅でもセルフケアとして、至陰、三陰交にお灸していただく
・2~4回目
治療中は、胎動が活発になるが、途中での検診では逆子のまま
・5~6回目
仕事が産休にはいった
治療後は冷えている身体が温まるようになってきた
帝王切開予定がすでに組まれていたが、入院直前に逆子が改善して無事に赤ちゃんが生まれたことを報告いただきました。
逆子の改善に鍼灸治療を選択する場合は、医師との相談、指導が必要となります。
鍼灸治療は、副作用がないといわれており、妊婦さん、赤ちゃんの負担が少ないです。
逆子でお困りの方はぜひご相談ください。