便秘とは
便秘とは、「便が大腸内に停滞し、排便回数や排便量が減少した状態」と「直腸内の便をスムーズに排出できない状態」のことをいいます。
一般的に健康時の便通は、24〜48時間の間に1.2回規則正しくあるのが普通で、便秘の場合は3日〜数日に1回の排便で便秘といわれることが多いです。
便秘は、国民の約15%が悩まされており、男性に比べて女性のほうが多い症状です。しかし、60代後半からは男女ともに増加し、80代では男性のほうが多い傾向があります。
便秘と加えて、排便困難、残便感、腹部膨満感、腹痛、ガス溜まりなど不快な症状が付随することもあります。
便秘の種類
[機能性便秘]
大腸に器質的病変を認めないもので、症状により弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘に分けられます。
1.弛緩性便秘
大腸の蠕動運動が低下し、腸内の内容物の通過が遅くなり、水分が多く吸収されて便が硬くなります。
高齢者や妊婦さんなどの腹筋の力が弱まっている方に多いです。
また、肩こりや頭痛、めまい、倦怠感などもおこる自律神経の不調の影響で便秘の症状が現れることもあります。
2.痙攣性便秘
副交感神経の過緊張により大腸の蠕動運動が亢進し、痙攣状態となり便秘になるものです。
これは「過敏性腸症候群」の便秘型によくみられ、便秘と下痢を繰り返すこともあります。排便時には、腹痛がみられやすく、便は兎糞状(うさぎの糞状)になります。
過敏性腸症候群は精神的ストレスで症状が悪化します。
3.直腸性便秘
糞便が直腸に達しても加齢による筋力低下で排出できない便秘です。
習慣的に便意を抑制することで排便反射が起こりにくくなります。
[二次性便秘]
器質性便秘の大腸がん、クローン病、潰瘍性大腸炎など
症候性便秘の脳血管障害、パーキンソン病など
これらの二次性便秘といわれるものは、鍼灸治療適用外となり、医療機関への受診が必要となります。
東洋医学からみた便秘
便の排泄は、大腸の伝化機能により行われます。これは、他の臓腑の機能や、気・血・津液などの生理物質、身体の実熱などの影響を受けるため、臓腑の機能失調や生理物質の盛衰、寒熱の偏りにより、症状が現れます。
大腸の伝化機能に影響を与える臓腑の機能としては、「肝の疏泄」「肺の宣発、粛降」「脾の運化」があります。
1.熱秘(実熱による便秘)
辛い食べ物を偏食するなどの胃腸に熱がこもり、津液が損傷することで排便困難となる状態です。
熱邪が胃腸に存在するため、便は乾燥して硬く、腹部膨満感、おならがよく出る、排便の切れが悪くなります。
2.気秘(気滞による便秘)
情志の失調により気機が鬱滞し、「肝」の疏泄機能の失調、「大腸」の伝化機能の失調によりおこります。
長時間座っていることが多い方に多いタイプです。
症状としては、便意はあるがすっきり排便しない、げっぷが頻繁におこる、胸脇部の痛みなどを伴います。
3.虚秘(気虚、血虚による便秘)
気虚による虚秘は、肺や脾の機能低下を引き起こし、大腸の伝化機能の失調によりおこります。
症状としては、排便力が弱まっている、疲労感や倦怠感、息切れなどがみられます。
血虚による虚秘は、腸を滋養できず、腸内の潤い不足でおこります。
便は硬く兎糞状で、顔色に艶がなく、めまいなどもみられます。
4.冷秘(陽虚による便秘)
虚弱で下焦の陽気が虚すと、温煦機能が低下し排便困難になります。
排便困難でときどきお腹が冷えて痛むタイプです。手足の冷えも感じやすいです。
当院の治療
自律神経を整える
自律神経測定器で自律神経のバランスを測ります。
便秘の方は、交感神経が優位になっていることが多く、下痢の方は副交感神経が優位になっていることが多いです。
自律神経の状態は個人差があるため患者様に合った治療法、ツボを選択して治療を行います。
自律神経が整えられると、大腸の蠕動運動が促進され便秘が改善されていきます。
また、胃腸の調子はストレスと深い関係があります。
鍼灸治療には副交感神経を高めリラックスを促す効果があり、ストレス解消につながります。
胃腸を動かすツボを刺激する
便秘の鍼灸治療では胃や腸の調子を取り戻すようにします。
胃、脾、大腸などが乱れているために引き起こされているので、これらの経絡経穴を刺激することで、腸の運動を刺激していきます。これにより腸内の便の移動が促進され、便秘の緩和を図ります。
便秘でよく用いるツボ
・足三里 膝のお皿の下外側から指4本分下に位置します。
腸管の蠕動運動を促します。
・中髎 仙骨の上にあり、仙骨孔の上から3つ目に位置します。
骨盤神経を刺激し、下部結腸や直腸の蠕動運動を促し、排便機能を正常化させます。
東洋医学に基づく生活指導
水分の過剰摂取や偏食は脾胃の働きを低下させるため、気虚または血虚を引き起こす原因になります。規則正しく栄養バランスのとれた食事をとりましょう。
過労、睡眠不足も脾胃の働きを低下させますので、適度な休養と睡眠を心がけましょう。
気滞は、肝の疏泄機能(イライラ)や情志の失調(落ち込みやすい)を発生させストレスを誘発させます。
日常生活の中で趣味や軽い運動をするなど、ストレス発散する手段をもちましょう。