【西洋医学的な原因】
1. 自律神経の乱れ
腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど、神経が密に走っています。
ストレス・不安・緊張などで自律神経が乱れると、腸の動きが過敏になったり、異常な収縮を起こすことで腹痛や下痢・便秘が起きます。
2. 腸内環境の乱れ(腸内フローラの異常)
善玉菌・悪玉菌のバランスが崩れることで、腸が敏感に反応しやすくなります。
抗生物質の使用・食生活の乱れなども関係。
3. 脳腸相関(のうちょうそうかん)の異常
脳と腸は相互に情報をやり取りしています(腸は“感じる”器官)。
ストレスが脳にかかると、それが腸に伝わり症状を引き起こす、という神経伝達の過敏反応が起きやすくなる。
4. ホルモンの影響(特に女性)
月経前や排卵期など、女性ホルモンの変化で腸の動きが変化しやすく、IBS症状が悪化することがあります。
5. 過去の感染・食中毒歴
一部のIBSは、腸炎などの感染後に慢性化して発症することがあります(感染後IBS)。
【東洋医学的な原因】
1. 肝気鬱結(かんきうっけつ)
ストレスや感情の抑圧で「気」の流れが滞る状態。
これが脾胃(消化系)を攻撃し、腹痛や便通異常を引き起こす。
2. 脾虚(ひきょ)
胃腸の働きがもともと弱く、消化・吸収・水分代謝が不調。
水様便・軟便・腹の張り・疲れやすさが特徴。
3. 寒湿(かんしつ)/湿熱(しつねつ)
冷えや飲食物の湿気・脂っこい物などにより、水分や熱が腸に停滞。
腹痛・下痢・悪臭のある便・お腹の張りなど。
4. 気滞血瘀(きたいけつお)
気や血の流れがスムーズでない状態。
ストレス性・慢性症状・便秘やガスの多いタイプに多い。
鍼灸でのアプローチ
鍼灸では、単にお腹の症状に対処するのではなく、「心」と「体」両方のバランスを整えることで根本改善を目指します。
・ 主に使われるツボ
神門(しんもん)・内関(ないかん) 自律神経を整え、ストレス反応を抑制
中脘(ちゅうかん)・天枢(てんすう) 胃腸の働きを整える/腹部の緊張をゆるめる
関元(かんげん)・足三里(あしさんり) 体力を養い、冷えを改善
大腸兪・脾兪・肝兪 背部から消化器系の働きを調整
加えて、お灸や温熱療法を組み合わせることで、腹部の冷えや緊張を深部から和らげ、腸の動きを穏やかに整える効果が期待されます。
最後に
IBS(過敏性腸症候群)は一時的に薬で症状を抑えることはできても、根本的な体質改善やストレス耐性の向上がなければ再発しやすいのが特徴です。
鍼灸は、体と心の両面から整えることで、慢性的な症状をやさしく、じっくり改善していく治療法です。
「検査では異常がない。でも確かに不調がある」
そんな方こそ、鍼灸という選択肢を一度試してみてください。