◆ 自律神経失調症とは?
自律神経とは、私たちの体内環境を自動的に整えてくれる神経系のこと。
呼吸・血圧・消化・体温調整・ホルモン分泌・免疫など、生命維持に関わるさまざまな機能を24時間コントロールしています。
この自律神経は、「交感神経(活動モード)」と「副交感神経(リラックスモード)」の二つがバランスを保って働くことで、健康な心身の状態を維持しています。
ところが、ストレス・生活リズムの乱れ・過労・不安・気候変化などの影響でこのバランスが崩れると、さまざまな症状が現れます。
◆ 主な症状
自律神経失調症の症状は人によって異なりますが、以下のような不調がよく見られます:
・動悸・息切れ・めまい・ふらつき
・胃のもたれ・便秘・下痢・吐き気
・頭痛・耳鳴り・肩こり・倦怠感
・不安感・イライラ・不眠・うつ状態
・手足の冷えや多汗
これらは器質的な異常(レントゲンや血液検査で見える異常)がないことが多いため、病院で「異常なし」と言われてしまい、より不安になってしまう方も少なくありません。
◆ 東洋医学から見る自律神経失調症
東洋医学では、自律神経失調症のような「不定愁訴(ふていしゅうそ)」を、気(エネルギー)・血(けつ)・水(すい)の巡りが乱れた状態と捉えます。
特に関係が深いのが、「肝(かん)」と呼ばれる臓腑の働きです。東洋医学の「肝」は、感情やストレス、気の流れと深く結びついており、ストレスがたまると“肝の気”が滞ってしまい、全身のバランスが崩れてしまうとされます。
また、「脾(ひ)」や「腎(じん)」の弱りも関係することが多く、個人の体質や生活習慣に応じて、総合的に体全体の状態を診ていくのが鍼灸のアプローチです。
◆ 鍼灸でできること
鍼灸治療は、自律神経のバランスを整えるうえで非常に効果的です。
以下のような作用が期待されます:
1. 自律神経の調整
ツボを刺激することで、交感神経の興奮を鎮め、副交感神経の働きを高めます。これにより、リラックス状態をつくり、体と心の緊張をゆるめることができます。
2. 血流とエネルギーの巡り改善
鍼やお灸によって気血の流れがスムーズになり、冷えやこり、内臓の働きの低下などを改善します。
3. 不安・不眠への効果
神門(しんもん)や百会(ひゃくえ)などのツボを用いることで、精神的な安定や睡眠の質の向上を図ることができます。
4. 体質改善
鍼灸は一時的な症状の緩和だけでなく、体全体のバランスを整えるため、「不調になりにくい体」づくりをサポートします。
◆ よく使われる代表的なツボ
神門(しんもん)→ 精神安定・自律神経の調整・不眠
百会(ひゃくえ)→ 頭の重さや不安感・めまいに
内関(ないかん)→ 動悸・不安・胃の不調
足三里(あしさんり)→ 胃腸の調整・疲労回復
三陰交(さんいんこう)→ 冷え・ホルモンバランス調整
◆ 通院の目安と施術の流れ
・週1回程度を目安に、まずは4~6回の施術で体の反応を見ます。
・徐々に体質の変化を感じるようになったら、月に1~2回のメンテナンスへ移行。
・自宅でのお灸指導や、生活習慣の見直し(食事・運動・睡眠)なども併せて行うと効果が高まります。
◆ 最後に:不調の原因が「わからない」あなたへ
自律神経失調症は、現代人のライフスタイルと深く関わっています。
「自律神経の乱れ」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、要は**“がんばりすぎた体と心の悲鳴”**です。
鍼灸は、そんなあなたにそっと寄り添い、体の内側から静かに整えていくやさしい医療です。
不調が続いているけれど、原因がはっきりせず悩んでいる方は、一度ご相談ください。
鍼灸が、あなたの本来の健やかさを取り戻すお手伝いができるかもしれません。